2階建て住宅 [建築]

大学生の頃、授業で聞いたのか、何かで読んだのか、定かではないが、住宅で「2階建は空間が分断されて良くない云々・・・。」という話を聞いた。この話を聞いたときに、実感が沸かず、むしろ不思議に思ったことだけは今も記憶にある。なぜなら、これまで平屋の貸家で育ってきた私にとって、2階建の1戸建て住宅は憧れの対象だったからである。
結婚を機に、新居を探すことになり、勤務先の近くに戸建、マンションを含めて20件位は見て回ったろうか。結局、今、住んでいる部屋に決めた。決め手は間取りと、メゾネット形式ということだった。この部屋はマンションでありながらメゾネット形式という2階建になっている。お客さんをお招きすると、大抵、階段があることに驚かれ、話のネタにもなる。
間取りは、1階がLD+K、水周り、そして共用廊下側に6畳弱の洋室が一つ。2階は6畳弱の洋室と、6畳強の和室という3LDKの構成である。各個室にはクローク、押入れなどの収納が設けてある。リビングや玄関からの廊下にも収納が設けてある。キッチンは動線が2方向につながるようになっていて、一方はダイニング、もう一方は玄関からの廊下につながるようになっている。一般的なマンションに比べると、良く練られたプランで、それが決め手になった。
ところが、2年ほど、ここで生活してみて、大学生の頃聞いた話がなんとなくわかってきた。1階と2階では確かに、いろいろな意味でのつながりが強制的に分断される。
私たち夫婦にはまだ、子供がいないので、夫婦二人の生活だが、私が1階の洋室で仕事をしているとき、妻が1階のリビングで仕事をしたり、家事をしたりしているときには、なんとなく気配が感じられ、安心感がある。また、ドアを開け放ったり、閉めたりでつながり具合をコントロールできる。ところが、妻が2階で仕事や家事をしているときには、別の場所に居るように感じられる。それは、つながり具合をコントロールすることができず、強制的に分断されてしまうからだ。
子供ができたときのことを想像してみた。そうすると、子供が一人であれば、1階の個室を子供部屋にあてがうのだろうが、2人になると、2階の2室が子供部屋で、1階の洋室が夫婦の寝室。あるいは、男女で部屋の使い方が分かれたりするかもしれない。今、私が感じている感覚からすると、子供部屋を2階に持っていくという案はちょっと末恐ろしい。それほどの断絶感がある。しかし、2階に子供室という間取りは、ハウスメーカーや分譲住宅に良くみられる間取りの形式でもある。
ものの本によると、この狭い日本の国土においても、かつては平屋が一般的だったらしい。それが、ある頃から(やっぱり高度経済成長期だろうか?)、2階建の戸建て住宅が普及し始めたらしい。そして、やがて住宅の中に階段があるという光景は庶民の憧れにもなった。私も、憧れた一人である。
2階建住宅が普及したのには、それなりに切実な理由がある。都市への人口集中が起き、地価が高騰。庶民が住宅を建てるのに得られる土地の面積で、4LDK、30坪程度の床面積を確保するためには、どうしても2階建にせざるを得なかったのである。今や、現実には狭小住宅と呼ばれる3階建て住宅を建てざるを得ないほど、都市の土地面積は小さくなってしまっている。
やはり背に腹は代えられない。この狭い土地面積において2階建、3階建の住宅を考えざるを得ないのだろうが、そうすると、いかに縦のつながりを形成するかが、今後の都市住宅の主題であるように思われる。

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