建築デザイン・サーベイ 1 [建築]

私はなぜか団地のそばに縁があります。団地ではなく、団地のそばです。10年近く、東京・練馬の光が丘団地のそばに住んでいましたし、今は、勤務先が千葉ニュータウンのそばにあります。でも、住んでいるのは千葉ニュータウンではありません。だから、そばに縁があるのです。何気なく見ている公団の風景ですが、色々と気付かされることがあります。その多くが「学校で習ったよなぁ」と、感じさせられるような事柄です。逆に言えば、団地の中を歩いていると、いろいろ建築デザインの勉強にもなるということになります。
20100126-8-2.jpgこれはその一つの例かもしれないです。建築を設計する際、パースというものを描きます。パースとはPerspectiveという英語を略してパースと呼んでいるのですが、Perspectiveとは日本語で言うと「遠近法、透視投影法」などと訳されます。ところが、建築業界でパースと略して言うときはほぼ間違いなく「遠近法を使った完成予想図」のことを指しています。設計途中で建築家は何枚もラフなパースのスケッチを描いて、住棟の配置やスカイライン、植栽の配置や樹種などを検討します。団地の中を歩いていると、そうやってデザインを練って、この風景を作ったんだろうなぁ、と感じさせられる箇所が所々にあります。
これは千葉ニュータウンを歩いていたときに感じたことです。遠近法では消点、消失点と呼ばれる点に線が集まるようになっています。消失点が一つの場合を1消点法、消失点が2つの場合を2消点法、3つの場合を3消点法と言います。通常のカメラのレンズで撮影した写真は3消点法になります。
20100126-9.jpgこの写真は上の写真をphotoshopで加工して2消点にしました(垂直線をすべて平行にして天の方向の消点を消しました)。まぁ、でも、ほぼ正面に消失点(赤い丸)があるので、1消点と考えた方が良いかもしれないですね。道路やぺイブ、街路樹などがすべて、この消失点に向かって配置されているのがわかると思います(赤い点線)。ここまでは普通の街路を撮影しても同じような絵になります。ここのアングルがやはり計画的に作られているのではないだろうか?と感じさせられるのが高層の住棟の配置です。高層棟の左側の垂直線が調度、消失点の所から上に伸びています。そして高層棟の中心ととらえられる垂直線(黄色の線)は、消失点から右に少しズレています。このような構図を考えることで、消失点に向かう方向(奥に向かう方向)の水平線と、アイストップとなる垂直線の両方が強調された形になります。しかも、高層棟が正面を向かずパースに対して少し斜めに配置されているところは秀逸です。ヨーロッパの都市計画では、消失点の上には黄色の線が来るだろうし、高層棟の住棟も正面を向いています。それによって、幾何学的厳格さと美しさを強調しますが、ここでは敢えてそれを崩しています。おそらく、初めてこの千葉ニュータウンに降り立ち、駅の方から向かってくる人たちに対して、ニュータウンの大きさを水平線で強調し、高層棟のアイストップによって、ここからニュータウンの住宅地が広がっているというサインになっているのだろうと思うのです。これはおそらく、意図的、計画的に作られた構図ではないだろうかと思われます。このような意図的、計画的な構図、構成は、建築家であれば、設計段階で考えるのですが、それが、ここでは教科書的な一服の絵になっているのです。公団のデザイナーのデザインは堅いと言えば堅いのですが、常に平均値以上の堅実さを持っているとも言えます。
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